数年前からアメリカを中心とした北米で、トレーラーのシャシーに木造の小さな家を乗せた「タイニーハウス(Tiny house)」と呼ばれる、キャンピングトレーラーとは一線を画す車両(?)が、ちょっとしたブームになっているようです。
「車両(?)」としたのは、タイヤがあって移動できるようにはなっているものの、ほとんどのユーザーは移動する目的で利用していないから。彼らにとってタイニーハウスは、メインの住居であり、ライフスタイルなんですね。見た目も普通の家を小さくしただけのような “屋根” があるタイプが多い。ちなみにタイニーハウスを直訳すると「小さい家」。
「キャンピングカーじゃないじゃん」と突っ込まれそうですが、キャンパーズネットではいわゆるキャンピングカーだけににこだわらず、こういったオフグリッドな暮らしなどについても扱っていきたいと思います。キャンピングカーにとってヒントにもなりそうですしね。今回はその序章といった感じです。
タイニーハウスのパイオニアが考案したベーシックなレイアウト
今ではいろいろなタイニーハウスがあるようですが、まずは原点といえる1台(一軒?)に注目してみます。1997年、アメリカ人の Jay Shafer さんが昨今のムーヴメントの元となるタイニーハウスを作ったようです。今回紹介するタイニーハウスがその1台目ではないようですが、ここではジェイさんのサイト「FOUR LIGHTS 」から画像を拝借して見ていきましょう。
エントランス(玄関)は、クルマと連結した際でいう背面にあります。入ってすぐ両脇に水回り(左にキッチン、右はトイレ&シャワー)が配置されていて、その上はロフトの就寝スペースです。水回りを抜けると吹き抜けのリビングスペースが広がっています。正面突き当たりはデスクになっていてワークスペースとしても機能するデザイン。無駄がなく、実に機能的でありながら、なんだかワクワクする内装じゃないですか?
タイニーハウス・ムーヴメントの発端は?
初めて知った時は、正直「広大なアメリカでなんでまた…」なんて思ってしまいましたが、ブームの発端は 2008年 のリーマンショックが関係しているようです。
あのインパクトで家を失った人々は、やっぱり少なくなかったようで、それまでの物欲に溺れた暮らしを見直すいい機会になったのかもしれません。ローンやクレジットカードなどの借金に追われる生活に嫌気がさした人々が、シンプルなライフスタイルに目覚めたんですね。「幸せって、なんだろう…」という具合に。
タイニーハウス、オフグリッド、シンプルライフ…
アメリカのシンプルなライフスタイルには、タイニーハウスの他にも、もちろんあります。近年では「オフグリッド」という言葉も耳にするようになりました。オフグリッドとは、送電線網(グリッド)に繋がない、ということですね。送電線だけではなく、ガスや水道も切り離した生活を実践している人たちもいます。日本でもわずかながら、完全オフグリッドの暮らしをしている人がいますね。
日本でオフグリッドという言葉を聞くようになったキッカケは、やはり 2011年 の東日本大震災だったようです。原発の停止によって、多くの人々が電気のない生活を、一時的ながら余儀なくされました。この経験から、発電所から送ってもらう電気だけに頼らずにすむ環境の構築に、目がいくようになったんですね。シェルターとしても利用できるキャンピングカーにも、改めて注目が集まるようになったといわれています。
新しいライフスタイルの一つとして、アメリカで静かなブームを呼んでいるタイニーハウスのアイデアは、キャンピングカーシーンのヒントにもなるのではないでしょうか。
最後に、タイニーハウス・ムーヴメントを 2011年 頃から取材して YouTube にアップしている Kirsten Dirksen さんの動画を紹介します。この動画は、ここで触れたタイニーハウス・ムーヴメントのパイオニア Jay Shafer さんを取材したものです。英語ですが、室内の様子なども観れます。
ちなみに Kirsten さんは日本にも数回訪れていて、日本の家屋なども取材してアップされてます。もともとテレビ業界で働いていたプロということもあって、動画の再生回数もかなり多いです。YouTube の彼女のチャンネルには、タイニーハウスの再生リスト もあります。